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2023.1/7「闇」

  • 執筆者の写真: ろばすけ
    ろばすけ
  • 2023年1月7日
  • 読了時間: 2分

更新日:2023年1月21日


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「ろうそくってこんなに暗いんだな」

 彼はそう囁くように言った。

 確かに店の中はとても暗かった。

 壁にもそれぞれのテーブルにも、たくさんのろうそくが燃えていたけれども、明かりはほんの狭い範囲を弱々しくオレンジがかった色で見せるだけで、とても「照らし出す」というほどの力はない。

 店の中にはたくさんのテーブルがあり、半分以上のテーブルに誰かしら座っていることは、気配とシルエットでわかる。

 あまりにも生々しい「炎」は、普段は僕らの暮らしの中にないものだった。何かの拍子に倒れてまわりを焼き尽くすのではないかと本能的に恐れを感じるくらいなのに、その光はあまりにも弱々しい。

 そして炎のせいで僕らがむしろ強く感じたのは、光が届かない、店の中にさえあちこちに存在する「闇」へのうっすらとした「怖れ」の方だった。

 火があり、一部が辛うじて照らされているが故に、逆にその向こうにある闇の存在が浮き上がり意識され、目は明るい場所を見るのではなく、そこにあるのかどうかもわからない「何か」を見ようとしてしまう。

 そして僕らが否定しようもなく抱えているうっすらとした恐怖は、そのうち膨れ上がって、ないものまでこの目に映し出してしまいそうだった。

「どうして小声でしゃべるんだよ」

 本当はわかっていたけど、僕はそう敢えてからかうように聞いたのだけど、彼はまっすぐに返してきた。

「だって、誰が聞いてるのかわからないだろ。それが怖い」と。


(ほの蒼き瞳)

 
 
 

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