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20230215 「相棒」

  • 執筆者の写真: ろばすけ
    ろばすけ
  • 2023年2月15日
  • 読了時間: 1分


「よし出かけよう」

 そう言うと、もうずっと待ちきれない様子でドアの前にいたおまえはくるりと回って見せる。

 そして俺がドアを開けたとたんに駆け出していく。

 秋の森は湿気て静かに少しずつ腐っていく木の葉の匂いに満ちている。

 俺の鼻に感じ取れるのは、乾いた枝と砂利の匂いと、木立を渡ってくる冬の気配の違いくらいだけれど、おまえはその奥に、キノコや動物の死骸や木の実や、そして土に埋まったトリュフの匂いまで嗅ぎ分けてしまう。

 実際おまえはたいしたやつだ。


「今日は東の峰の向こうに行ってみよう」

 そう言って指さすと、おまえはもう全部わかった! という顔でそっちへ駆けていく。

 俺が杖をつきながらゆっくり歩く周囲をぐるぐる回っては、時々確かめるように戻ってくる。


 最近はあんまり楽しくなさそうだね?

 森は変わらないし、ゲームはこんなに楽しいのに!


 そう言われてるように感じるのは、たぶん俺の感傷だ。

 おまえが走れなくなるのと、俺が歩けなくなるのと、あるいはこの森からトリュフが消えてしまうのと、一番最初にくる「終わり」は一体どれだろう?

 最近の俺が考えているのはそんなことばかりだ。



ree

「白いトリュフの宿る森」

https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/75Krt1wOWDw


 
 
 

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