20230219 Your Place, or Mine 1/Jack
- ろばすけ

- 2023年2月19日
- 読了時間: 2分
更新日:2023年3月4日
1/Jack
「OK。じゃあ、この案でいきましょう」
待っていた台詞を聞いて、俺は内心でガッツポーズを決めながらも、すましたまま隣に座っているアンドリューの顔を見た。
彼はにっこりと頷いて見せて言った。もちろん俺にじゃなく、クライアントに返してだ。
「ありがとうございます。きっといいものができますよ。来週にはスケジュールとスタッフの詳細をお出ししますし、並行してオーディションも段取ります。
……大丈夫だよな、ジャック?」
そう水を向けられて、俺は笑って短く返した。
「もちろんです」
「やったな」
オフィスを一歩出たとたんに、アンドリューに背中を叩かれた。少々強すぎるくらいのそれも、今はちっとも気にならない。
「いい企画だから通るとは思ったけど、ほぼ提案通りじゃないか」
俺はCMの製作会社で働いている。代理店の営業担当であるアンドリューとは幼馴染で、彼がロンドンで仕事をしていた俺をエジンバラに呼び戻した。今の会社は彼の紹介だ。
同じ会社で働いているわけじゃないけど、組んで仕事をするのも3度目。我ながらいいコンビになりつつあると思う。
数ヶ月前から関わってきた今回の企画は、こっちの食品メーカーのもので結構大きな仕事だ。
提案していたのは俺のアイディアで、スタッフも俳優も地元のメンバーで固める予定で、自信があったけど全部そのまま通るかどうかは正直危惧していたんだ。
「予算もしっかり取れたし、返事を待ってる連中に早く連絡しなきゃ」
俺がそう言うと、アンドリューはアプリでタクシーを呼びながら言った。
「ああ。時間は全然ないからな」
「わかってる。ものすごく忙しくなりそうだ」
アンドリューと別れ、オフィスに戻りながら何件も電話を掛けた。新しいプロジェクトが始動するときの興奮と、これからしばらくは休みなしだぞ、というあきらめを同時に感じてたところに、そいつが来たんだ。
『ジャック、ちょっと頼みがあるんだけど』
仕事のメールじゃなく、私用のチャットアプリに来たのはそんなテキストだった。
送ってきたのはトム。ちょっと年下の友人だ。
同時に、彼のきれいな顔がちらりと脳裏に浮かんだ。
>> 2/TOM




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