20230222 Your Place, or Mine 4/Tom
- ろばすけ

- 2023年2月22日
- 読了時間: 3分
更新日:2023年3月4日
4/Tom
2週間の宿について、僕は『お金はないから安いところで。贅沢は言わない』、って強調した。
『夏休みの間なら大学の寮が借りられるんじゃないか?』
『友達がルームメイト探してるから、短期でもいいか聞いてみようか?』
ジャックからはいろいろ考えてくれたっぽい返事が来た。
本当は、僕は『なんならジャックに部屋のソファでいい』って書きたかったけど、それはやっぱりいざとなるとすごくハードルが高かった。
だって僕らにはちょっと気まずい過去があったから。
彼と出会った撮影が終わった日、大きな打ち上げがあった。
僕はもちろん参加し、ずっとジャックのそばにいた。それまでの数日もわりと一緒にいたけど、待ち時間ばかりの僕と違って彼は忙しくしてたから、僕はその機会をものすごく楽しみにしてたんだ。
ジャックの周囲には常に沢山の人がいたけど僕はそばを離れなかった。
ものすごくわかりやすい態度だったと思うし、もちろん彼もそれに気づいていた。
偉い人たちが帰って二次会に流れ、僕らの距離はさらに近くなった。
そして酔っぱらって機嫌よく笑った彼は言ったんだ。
『このまま俺の部屋に来る?』
どうしてその時、そのまま頷いてしまわなかったのか、それからずっと後悔してる。
ジャックはどう考えてもすごくモテるタイプで、その一言も僕が断らないってわかってるって感じの、すごく軽いものだった。
がっかりした、ってわけじゃない。嬉しかった。それが僕の望みだったからだ。でも、あまりにも軽く言われたから、躊躇してしまったんだ。
今、言われるまま今夜彼の部屋に行って、それで寝たとしたら、たぶんそれで終わりなんだろうなって。
別にそれでいいって思えればよかったんだけど。別に誰かと勢いで寝たことがないってわけじゃなかったし。
でもその時僕は返してしまったんだ。
『別にそういうの望んでない』って。
そういうの望んでない、っていうのは、すぐに忘れられるような関係は嫌だってことだった。でも彼はそうは受け取らなかった。
『ああごめん。わかった。友達な』
そう、さっきよりもっと軽く言われて、じゃあって手を上げてそのまま帰って行きそうになったから、僕は言った。
『また会える?』って、それこそ必死で。
でもそしたらジャックは笑った。
『ああ、そうだな。連絡先は今回の資料見ればわかるけど。聞いとく。またなんかあったら声かけるよ』
仕事があったら嬉しい。それも本当だった。もうすぐ学校を卒業するけど、その先の保証なんか何もないから。
でも、僕の「また会える?」はそういうことじゃなかった。言えなかったけど。
『よろしく』
僕は精いっぱい虚勢を張ってそう言った。
ジャックはそのあと、たまに気まぐれに連絡をくれた。オーディションの話とか、知り合いがやってる舞台を見に行かないかとか、友達が集まるパーティがあるけど来る? とか。
僕はジャックの「友達」になれた。それは僕の一番の望みではなかったけど、でももうそんなことを言いだせる雰囲気ではなかった。
そして1年も経たないうちに、ジャックはエジンバラに帰ることになった。
僕はどうしたらよかったんだろう。とりあえず寝ておいたらよかったのかな。でもそうしたら、その後彼は僕を友達扱いしてくれたかな?
ジャックがロンドンに来るたびに会う友人の一人に放ったんだから、それで満足するべきなのかな。
このままじゃ何も変わらない。
そう思っていた時に、夏の短期講習の話を知った。
改めて2週間そばにいられたら、僕らの関係も帰られるかも? そう思ったんだ。
でも僕がそっちに行くよ、って話をしてから1週間くらいしてから、ジャックからテキストが来たんだ。
『トムがこっちに来る時期、俺がロンドンに行かなきゃならなくなった。なあ、ちょうどいいから部屋交換しないか? 俺の部屋好きに使ってくれていいから、俺も君の部屋で過ごしていい?』
>> 5/Jack




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